「食」のおもてなし
シェフ 豊岡 聡
こういう時代だからこそ、よりベーシックに忠実に

昨年は食材選びもお料理の見た目も何かしらの「新しさ」をテーマとしてきましたが、今年はそれに加え、よりベーシックに忠実であることを大事にしていきたいと思っています。
特にソース作りに関しては、より一層力を入れています。例えば、赤ワインを使ったソースというのは大抵お肉料理に使われますが、指帆亭では魚料理に合わせる赤ワインソースも作ります。これは、最初に魚と相性の良い白ワインを使ってソースを作り、それをベースに赤ワインで作ったソースと混ぜ合わせて仕上げるものです。
もちろん時間もかかりますが、“なるべく手を抜く”ような現代だからこそ、味の基本にあるソース作りに手間を惜しまないことがとても大事。以前は創作フランス料理という考え方が全面に出ていたと思うのですが、“原点”に戻り『ベーシックなもの作り』にこだわりたいんです。

厨房も万全の段取りで臨みます

以前お世話になった方の教えが、「色々な作業を器用にこなしてこそ真のコック」でした。要は、料理人もサービスや電話の対応ができないとダメ。調理ができるのはもちろん、ケーキが作れるのもあたりまえ。レストラン1軒を丸ごとできて初めてコックだということですよね。なので以前はホールも経験しましたし、ワインのサーブなどもひととおり勉強しました。
そういった経験は、まさに今の指帆亭の厨房に生かされていると思います。特に婚礼は、何十名分ものお料理を一度に仕上げるわけですから、事前の段取りがきちんと組めているかどうかが肝になってきます。お客様に最も良い状態でお料理をお出しするための事前のスタンバイや仕込みの段取りを、厨房内のひとりひとりが万全を期して臨んでいます。

食材選びのキーポイントは・・・

今の時代は、季節を問わずあらゆる食材が手に入ります。冬にスイカが食べたくなっても、探せばありますよね。だからこそ食材は「旬」という考えに執着して、可能な限り取り入れています。
今のように冷蔵庫も普及していなかった時代、フランスは周りを山に囲まれているため食材の流通が困難だったんです。となると必然的に、手に入る食材=季節のものしか使えないことが基本なので、フランスもイタリアも「旬」という考え方は日本と共通していますね。


食材の仕入れに関しても、特に気を使っています。私達は、良いものを仕入れる手腕を問われます。そのために私が日々大切にしていることは業者さんとの関係。
そういう心掛けというのは、相手にも伝わるものだと思います。急なお客様の注文に困っても、必ず助けてくれる。良い食材が入れば、どこよりも早く知らせてくれる。
時間をかけて培った信頼関係というのは、いざという時に生きるものですね。

目指すのはお客様のイメージの“1つ上”

お客様からの声はホールスタッフや支配人から積極的に聞きます。1か月の間に何度も足を運んでくださる方もいらっしゃるので、そういう点が料理に対する評価の判断材料になることもありますね。
もちろん、コース内の料理を今回は別のものに変えてほしいというリクエストなどにもお応えしますし、嫌いなものやアレルギーで食べられないものなどもご予約の段階で確認をして、変更後のメニューを後日ご連絡いたします。ご来店当日でも、その場で対応できるものであれば適宜変更します。


メニューの考案や料理の基本となる考え方は、自分自身が料理を提供される側に立った時に心打たれるものは何か?ということ。つまり作り手として、お客様が抱くイメージの“1つ上”を目指すんです。
例えば、カップルの希望を表現するケーキ製作には特に力が入ります。ご希望やご要望のさらに上をいくサプライズを準備するのも、作り手の醍醐味といえます。
普段厨房から出ない私も、ケーキカットの時には皆さんの反応を知りたくて、奥からこっそり顔を出したりしているんです。「すごーい!」「かわいい!」なんて声が聞こえたときには、ついつい顔がほころんでしまいますね。

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